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明日への道徳
道徳教育と
学校評価

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 特別の教科道徳が小学校では2018年から中学校では2019年から実施されています。ここでは道徳教育よりよく実現するための評価方法について考えてみました。
 多くの人に見てもらうためにホームページで公開しました。
 Word文書,Excelのグラフと表をホームページ用に直しました。
 PDFにはアンテナハウスの「瞬間PDF作成8」を使いました。
 モバイルフレンドリーです。横の伸縮は自由にできます。PCの方はPDFが見やすいと思います。
 お役に立てば幸いです。
樹医SATO(佐藤充千也)
PC用PDF版はこちら


道徳教育と学校評価

 目 次

1 はじめに

2 アメリカ,オーストラリア,シンガポール,イギリスの道徳教育
(1)アメリカの道徳教育
(2)オーストラリアの価値教育
(3)シンガポールの市民性教育
(4)イギリスの道徳教育

3 日本の道徳教育
(1)道徳教育の目標
(2)道徳の時間の目標
(3)道徳教育の全体計画,年間指導計画

4 学校経営と道徳教育全体計画

5 道徳教育と学校行事

6 学校におけるいじめ問題

7 学校評価の実際と今後の課題

8 評価方法の工夫
(1)評価尺度の種類
(2)リッカート法による評価の工夫
(3)学校文化と問題行動
(4)評価精度向上を目指して
(5)P・D・C・Aサイクルの活用

9 おわりに




1 はじめに
 「特別の教科道徳」が小学校では平成30年から,中学校では平成31年から実施される。
 道徳を教科化することについては戦後間もないころから提案されてきたが,修身の復活を警戒する反対意見が強く,今日まで実施されることはなかった。しかし,社会の変化とともに道徳教育の重要性が見直されてきた。
 一方,世界はグローバル化の進展により多民族・多文化国家化が進んだ。それにより多くの国家が多様な民族と多様な文化を持つ人々によって構成されるようになった。この複雑な国家を一つにまとめる手段として道徳教育が重要視されている。
 本研究では先ずアメリカ・オーストラリア・シンガポール・イギリスの道徳教育の特徴を概観することにより日本の道徳教育との相違点を見た。そして学校教育における道徳の意義や役割を確認するとともに,学校運営の改善に欠かすことのできない学校評価についても工夫を試みた。

2 アメリカ・オーストラリア・シンガポール・イギリスの道徳教育

(1)アメリカの道徳教育※(1)

「人格教育」(character education)
 人格教育とは,個人と社会にとって良いとされる核心的な徳目を教え込むことにより,善の人格を形成する計画的教育である。
 道徳的価値を知るだけでは実際の行動することは難しい。そこでそれらの価値に動機づけられ,実際に行動に移し習慣化されることを目指している。習慣化にあったっては,指導する価値項目を限定して繰り返し実行させるようにする。価値項目は,正義・勤勉・共感・尊重・勇気などである。人格教育は,学力の問題を解決することも目指している。
 人格教育の効果としては,「暴力の減少」「しつけに関する紹介の減少」「破壊行動の減少」「出席率の向上」「学力の向上」などが報告されている。

「サービスラーニング」(Service Learning)
目的は,地域における市民性の育成である。学校で教える教科内容やスキルを コミュニティーに貢献する活動(コミュニティーへの参加)と結び付けること によりコミュニティー貢献活動を学校カリキュラムへ統合するのである。 サービスラーニングの教育目標は二つある。

「慈悲性」:子どもに利他主義の感覚を養う
「変革性」:子どもが社会問題を批判的に分析する技能を養う

「社会性と情動の学習(SEL)」(Social and Emotional Learning)
 これは子どもや大人が自分の感情を認識・管理し,他者へのケアリング(援助)と配慮を示し,肯定的な人間関係を作り,責任ある決定をし,困難な状況に建設的に立ち向かうために必要な知識・態度・スキルを獲得する過程である。
 子どもたちが学校生活をうまくやっていくうえで,社会的・感情的・精神的・健康的な障害があるあるとの指摘から,社会性と情動の学習が必要であるとされたのである。
 SELの普及を目指すCASEL(Collaborative for Academic, Social and Emotional Learning)は,SELの中核となる能力(competency)を5つ示している。

「自己への気づき」:自己の感情や関心,価値を認識し,自己の強みを正確に評価すること。

「自己管理」:自分の感情を統制し,ストレスや衝動を管理し,障害を乗り越えるのに耐えること。

「社会への気づき」:他者へ目を向け,個人や集団の類似点や差異を認識すること。

「対人関係能力」:協働性に基づいた健全で得るものがある関係を構築し維持する。不適切な社会的圧力には抵抗し,対人間の争いは予防し,統制し,解決する,また必要な時には助けの手を差し伸べる。

「責任ある意思決定」:学校,家庭,地域において,こうした決定をするさいには,倫理的なスタンダードや安全への配慮,適切な社会規範,他者への尊重,一連の行動の結果へ配慮する。

 SELの効果として,肯定的な社会行動,問題行動の低減,情緒的疲労の低減,学力の成功をもたらすことが挙げられている。

(2)オーストラリアの価値教育※(2)
 オーストラリアは多民族・多文化国家である。移民の増加により,多様性を認め合いながら国家として一つにまとめていくことが課題である。そこで共有価値を身につけた市民の育成のための教育が課題になっている。
 価値とは,「一般に行為へと導く原則や基本的な信念,それによって,特定の行為が善ないしは望ましいものと判断される基準」とされる。
 学校全体で取り組むことを求める価値教育は,「諸価値を教える教育」ではなく学校の教育活動を価値の視点で見直す教育である。
 学校の教育目標に諸価値を明確に打ち出すこと,学校の教育活動や教科教育に諸価値を組み込むことなどである。
 2005年に公開されたフレームワークでは,共有価値として次の9つが提示されている。

1.ケアと思いやり(Care and Compassion)
2.ベストを尽くすこと(Doing your Best)
3.公平な扱い(Fair Go)
4.自由(Freedom)
5.正直(Honesty) と信頼(Trustworthiness)
6.誠実(Integrity)
7.尊重(Respect)
8.責任(Responsibility)
9.理解,寛容,インクルージョン(Understanding,Tolerance,and Inclusion)
 これらの諸価値に基づいて学校の教育目標や学習環境が見直される。

「汎用的能力と価値教育」
 オーストラリアは,21世紀の市民に必要な資質・能力を育成する教育課程の実現を目指し,汎用的能力を導入した。
 汎用的能力は,リテラシー,数学活用,ICT技能,批判的・創造的思考力,倫理的理解,異文化間理解,個人的・社会的能力で構成される。それぞれに知識・スキル・態度・資質が含まれる。汎用的能力は,教科領域の学習にかかわり,学習は教科横断的に進められる。
 価値教育は,「倫理的理解」と関連するが,それに限定されず,他の汎用的能力にもかかわる。価値教育は,思考力,創造性,倫理的理解,異文化間理解,社会的能力を伸ばしたと報告がされている。

(3)シンガポールの市民性教育※(3)
 シンガポールは,中国系,マレー系,インド系などの民族で構成される多民族国家である。多様な民族を一つの国民(国家)へとまとめ,発展させるために市民性教育を採用している。
 道徳教育は「人格・市民教育」(Character and Citizenship Education:CCE)である。その枠組みが「カリキュラム2015」である。21世紀を迎え,これからの社会で育てたい資質や能力の視点で編成されている。
 「カリキュラム2015」の中核的価値は「尊重,責任,誠実,ケア(Care),レジリエンス(Resilience),調和」である。その外側に同心円状に@からBが配置されている。

@社会的・情動的コンピテンシー
 「自己意識(Self Awareness),自己管理(Self Management),社会的意識(Social Awareness),関係管理(Relation Management),責任ある意思決定(Responsible Decision Making)」,

A21世紀スキル
 「公民としての教養・知識,グローバル意識,文化横断的スキル(Civic Literacy Global Awareness and Cross‐cultural skills),批判的・創造的思考力(Critical and Inventive Thinking),情報コミュニケーション・スキル(Information and Communication skills)」

B目指す市民像
 「自信ある個人(Confident Person),自主的な学習者(Self-directed Learner),積極的に貢献する人(Active Contributor),関心を寄せる市民(Concerned Citizen)」

(4)イギリスの道徳教育※(4)
 イギリスでは道徳教育を,宗教教育,シティズンシィップ教育,PSHE(人格・社会性・健康・経済)教育が補完・連携しつつ受け持っている。

「PSHE教育」
 PSHEとは,Personal, Social, Health, Economic の4つの単語の頭文字である。PSHE教育の内容は,コミュニケーション・スキル,自分を知り,自分を守り,成長させていくスキル,集団や社会の中で生きていくためのスキル,薬物教育,金融教育,性関係教育,健康的なライフスタイルのための身体活動やダイエットの重要性などをテーマとしている。現代的な課題について取り組むことが多い。知識の獲得と同時に,実践力を育成することを強く意識した指導方法が採られている。

 PSHE教育は,必修教科にはなっていないが,学校において必ず教えるべきことは法律に定められている。2002年教育法第78条には「すべての公費で維持運営されている学校は子どものスピリチュアル的・道徳的・文化的・精神的・身体的発達を促し,子どもたちのその後の人生の機会,責任,経験のための,幅広くバランスのとれたカリキュラムを提供しなければならない」と規定している。PSHE教育の評価は,記述的評価である。

「シティズンシップ教育」
 自由と秩序,民主主義,政治制度,選挙制度,紛争,国際協力,法制度などの知識とともにアイデンティティと多様性,相互理解と相互尊重,地域への貢献などについて学ぶ。
 市民の生活として実際に必要となってくるコンピテンシー(資質・能力)である思考のスキル,討議するスキル,ディベートのスキル,交渉のスキル,調査分析のスキル,プレゼンテーションのスキルなどを学ぶ。遵奉,寛容,交渉による解決,暴力的でなく平和的解決などを大切にするなどの民主主義的な価値観や態度を身につける。

「宗教教育」
 宗教教育の内容は,1998年教育改革法により,各地方当局が設置を義務付けられている宗教教育諮問審議会によって作成されるアグリード・シラバス(協定教授細目)による。教育改革法では,キリスト教を重視することを確認するとともに,他の宗教の学習も促し,自分とは異なる宗教や文化をもつ者に対する理解や寛容を持つ態度を養うことを目指している。

「イギリス的価値観とナショナル・アイデンティティ」
 イギリス的価値観(British Values)とは「民主主義,法の支配,個人の自由,多様な信仰や信条をもった者に対する相互尊重と寛容」である。(Ofsted,2014,pp.35-36)
 多様な人種と多様な文化を持ちながらもイギリス国民として暮らすことが求められる。そして包括的なアイデンティティとしてのナショナル・アイデンティティの共有を目指している。
 イギリス的価値観は,PSHE教育,シティズンシップ教育,宗教教育が相互補完しつつ,カリキュラムのみならず学校全体で取り組まれる。

3 日本の道徳教育
(1)道徳教育の目標※(5)
 学校における道徳教育の目標は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づいて設定されている。教育基本法や学校教育法は,日本国憲法に掲げられた民主的で文化的な国家を建設し世界の平和と人類の福祉に貢献する国民の育成を目指す日本の教育の在り方を示している。それを実現するのが道徳教育であり,特に重視しなければならないことが目標として示されている。

@人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を培う。
A豊かな心をはぐくむ。
B伝統的な文化を継承し,発展させ,さらに個性豊かな文化の創造に努める人間を育成する。
C民主的な社会及び国家の形成発展に努める人間を育成する。
D平和的な国際社会の実現に貢献できる人間を育成する。
E未来を拓く主体性のある日本人を育成する。
F道徳性を養う。

(2)道徳の時間の目標※(6)
 道徳の時間の目標は,学校の全教育活動を通じて行う道徳教育の目標をそのまま受け継いでいる。さらに,道徳の時間以外での道徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によって,それらを補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚を深め,道徳的実践力を育成することが目標である。

@計画的,発展的に指導する
 全教育活動で行われる道徳教育との関連を明確にし,児童の発達段階に即して,基本的な道徳的価値の全体にわたって計画的,発展的に指導する。

A学校教育全体で行う道徳教育を補充,深化,統合する
 各教科や道徳,特別活動総合的な学習の時間などで行われる道徳教育のかなめとしての役割を担う。すなわち,各道徳活動において行われる道徳教育を,全体にわたって調和的に補充,深化,統合する時間である。

B道徳的価値の自覚を深める
 道徳的価値の自覚については,次の3つを押さえておく必要がある。

ア 人間理解や他者理解を深めていくようにする。

イ 自分とのかかわりで道徳的価値がとらえられること。あわせて自己理解を深めていくようにする。

ウ 道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思いや課題が培われること。

C道徳的実践力を育成する
 道徳的実践力とは,道徳的価値を実現するための適切な行為を主体的に選択し,実践することができるような内面的資質を意味しており,主として道徳的心情,道徳的判断力,道徳的実践意欲と態度を包括する。

「小学校学習指導要領 第3章 道徳」では次のように示している。

第1 目 標
 道徳教育の目標は,第1章総則の第1の2に示すところにより,学校の教育活動全体を通じて,道徳的な心情,判断力,実践意欲と態度などの道徳性を養うこととする。
 道徳の時間においては,以上の道徳の目標に基づき,各教科,特別活動及び総合的な学習の時間における道徳教育との密接の関連を図りながら,計画的,発展的な指導によってこれを補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚を深め,道徳的な実践力を育成するものとする。

 さらに,「第2 内容」において〔第1学年及び第2学年〕,〔第3学年及び第4学年〕,〔第5学年及び第6学年〕に対して次の4項目が示されている。

@主として自分自身に関すること
A主として他人とのかかわりに関すること
B主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること
C主として集団や社会とのかかわりに関すること
 これらの各項目には,学年ごとに,さらに具体的な内容が示されている。

(3)道徳教育の全体計画,年間指導計画※(7)
 道徳教育の全体計画,年間指導計画については「小学校学習指導要領 第3章 道徳」の「第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」において,次のように示されている。

@ 道徳教育の全体計画について
 道徳教育の全体計画の作成に当たっては,学校における全教育活動との関連の下に,児童,学校,地域の実態を考慮して,学校の重点目標を設定するとともに,第2に示す道徳の内容と各教科,特別活動及び総合的な学習の時間における指導との関連並びに家庭や地域社会との連携の方法を示す必要があること。

A 道徳教育の年間指導計画について
 道徳の時間の年間指導計画の作成に当たっては,道徳教育の全体計画に基づき,各教科,特別活動及び総合的な学習の時間との関連を考慮しながら,計画的・発展的に授業がなされるよう工夫すること。その際,各学年段階の内容項目について,児童や学校の実態に応じ,2学年間を見通した重点的な指導や内容項目間の関連を密にした指導を行うよう工夫すること。なお,特に必要な場合には,他の学年段階の内容項目を加えることができること。

4 学校の経営と道徳教育全体計画
 教育活動を進めるにあったては経営計画が立てられる。経営計画とは教育目標,経営方針,経営の努力点,教育課程の編成,学級経営目標,目指す学校像,目指す児童生徒像,目指す教師像等からなる学校経営の方針である。
 例として,平成14年度千葉県勝浦市立荒川小学校の学校経営の教育目標(8)をあげる。
「情報化・国際化及び少子高齢化等社会の変化が一層進む21世紀を生きる力を持って生き抜く人間の基本的な資質を養う。」
また,道徳教育全体計画の学校教育目標は次のとおりである。

「心豊かなたくましい児童の育成に努める。」
○思いやりのある明るい子ども
○自ら学び,よく考える子ども
○健康でよく働く子ども」

 学校教育目標は,道徳教育全体計画の学校教育目標を基にしている。
さらに,道徳全体計画には道徳教育目標,低・中・高学年の道徳重点項目及び重点目標,道徳の時間,各教科(国語,社会,算数,理科,生活,音楽,図工,家庭,体育),特別活動(学級活動,児童会活動,クラブ活動,学校行事),総合的な学習の時間,その他の教育活動(清掃,給食,休憩時の指導,環境の整備),学級経営等が含まれている。
道徳教育と各教科,特別活動,総合的な学習の時間との関連は,次の通りである。

「国語」 物語や童話などの文学作品を通して,感情や感銘を持つことのできる言語感覚を高め,豊かな人間性を養う。

「社会」 人間尊重の基本に立って社会の基礎的理解を図り,我が国の国土や歴史に対する愛情を育てる。

「算数」 筋道を立てて考え,根気よく解決する態度を育てる。

「理科」 自然を愛し,動植物を愛護しようとする心情を育てる。

「生活」 具体的な活動や体験を通して,自立の基礎を養う。

「音楽」 表現や観賞を通して豊かな情操を育てる。

「図工」 表現や観賞を通して豊かな情操を育て,粘り強くやり遂げる態度を養う。

「家庭」 日常生活を見つめ,家庭の一員としてよりよい生活をしようとする意欲と実践態度を育てる。

「体育」 健康増進と体力の向上を図り,明るい生活を営む。

「特別活動」 望ましい集団活動を通して心身の調和のとれた発達を図り,個性を伸長するとともに集団の一員としての自覚を深め,協力してよりよい生活を築こうとする自主的実践的な態度を育てる。

@「学級活動」
 学級全体の充実と向上を図り,健全な生活態度の育成に資する活動を通して,基本的な生活習慣の形成や望ましい人間関係の育成などの道徳性を育てる。

A「児童会活動」
 学校全体の立場から問題を発見,解決したり,学校生活を楽しくしたりするための行動を企画・運営したりする活動を通して,自主的,実践的態度を育てる。

B「クラブ活動」
 児童の個性を伸ばし,自己の生活を楽しく豊かにしようとする実践的な態度を伸ばすとともに,共通の趣味や関心を自主的に追及する態度を育てる。

C「学校行事」
 種々の行事への参加を通して,集団生活における個としてのあり方,協力,責任,勤労などの道徳性を育てる。

D「総合的な学習の時間」
 児童の興味や関心に基づく体験的な学習を通して道徳性の育成を図る。

E「その他の教育活動」
 清掃,給食,休憩時の指導,環境の整備

 道徳は,学校の経営方針,教育活動の根幹である。児童生徒の生活(生徒)指導から教科,特別活動まで目標が定められていることが分かる。

5 道徳教育と学校行事

 学校行事には,次の5つがある。
@儀式的行事(入学式,卒業式)
A文化的行事(学習発表会,合唱コンクール等)
B健康安全体育的行事(運動会,水泳大会等)
C遠足集団宿泊的行事(修学旅行,遠足等)
D勤労生産奉仕的行事(愛校作業,ボランティア活動等)
 例として,千葉県いすみ市大原中学校の平成28年度教育キャンプ実施計画※(9)をあげる。

@教育キャンプの基本方針
 校外学習は生徒が今まで学校生活の中で学習した教科,道徳,特別活動,部活動など,それらすべての知識・体験をもとにした総合演習の場と考える。生徒たちの自主的な活動を尊重し,自己決定の場を意図的に与えるように配慮し,指導にあたる。また,これらの実践が2学期以降の学校生活に生かせるよう指導・援助を行う。

A 教育キャンプのねらい

ア 集団生活(宿泊)を通して,責任感や協調性,自立性を養い,社会性を身につける。

イ 生徒相互・教師と生徒の触れ合いを経験し,友情の輪を広げるとともに信頼関係を更に深める。

ウ 日常経験できない大自然の中での学習を通して,見聞を広め,学習の深化・拡充を図る。

 学校行事にはそれぞれねらいがあり,子どもたちの成長を目指して行われる。 大原中学校の教育キャンプの実施計画を見ると責任感,協調性,自立性,社会性,信頼関係等の育成がねらいである。学校行事のねらいは道徳教育の目標をもとにしており車の両輪のように成り立っている。

6 学校におけるいじめの問題
 近年、学校における大きな問題はいじめである。いじめは人間の心に深く根差しており困難な問題であり、道徳教育がかかわるべき問題である。
 全国の国公私立小中高,特別支援学校を対象にした文科省の2016年度問題行動・不登校調査※(10)によれば,いじめ認知件数は,軽微なものを含めると前年度から小学校で1.5倍に急増した。全体では9万8676件増の32万3808件で過去最多であった。
 自殺した児童生徒は244人で,うち10人がいじめにあっていた。
 暴力行為は小中高全体で5万9457件であった。特に小学校は2万2847件であり5769件増加した。不登校は全体では18万2977人で7423人の増加であった。
 千葉県内の公立学校では,いじめは小学校が前年度比10%増の2万4876件で全体の8割を占めている。
 自殺は8人(中学生2人,高校生6人)で前年度と同数であった。いじめが原因との報告はないとのことであった。
 いじめの具体的内容は「冷やかし,からかい,悪口」(59.7%),「軽くぶつかられる,叩かれる」(25.6%),「仲間はずれ,集団による無視」(18.7%)などである。

 いじめ撲滅のために学校では「思いやりの心を育てる,人権意識を高める,命を大切にする心を育てる」等に力を入れている。具体的には、ポスターや標語の掲示や話し合いなどにより全教育活動を通じて児童生徒の心の育成を図っている。
 「思いやりの心を育てる,人権意識を高める,命を大切にする心を育てる」は,まさに道徳教育の目指すところである。これらの道徳性は道徳の授業を通じてその下地が作られる。そして、その実践の場として様々な学校行事が大切な役割を果たしている。

7 学校運営と評価
 学校が実施する教育活動は教育目標を実現するためのものである。したがって、その評価を行い改善に役立てることが極めて大切である。
 教育活動の評価は各学校が独自に行う。行事などは主にアンケート調査が用いられる。
実際の学校評価の例※(11)として千葉県いすみ市立大原小学校の平成28年度の学校評価[資料1-1]と平成29年度の学校評価[資料1-2]を紹介する。

 平成28年度の調査では「4良い,3普通,2やや悪い,1悪い」という4段階評価を用い,評価結果は平均点で示されている。全体的に4から3の間の高評価であり,3以下の低評価は見られない。これは4段階評価のため中間点がないからである。

 平均点は評価の全体的な傾向(偏り)を表すのであって評価そのものではない。質問の内容や仕方,選択肢のラベルによっても違ってくる。平均点が低いから問題があるとも言えないし,平均点が高いからよいというものでもない。平均点からは各評価の割合が分からない。低い評価には、それなりの理由があるに違いない。

 平成29年度の調査は28年度と同じ4段階評価であるが,評価結果は帯グラフで示されている。そのため,「良い」,[普通],「やや悪い」,「悪い」の各評価の割合が分かりやすい。異なった意見に目を向けることができる。
 質問を「職員は」で始めることにより自身の問題として考えるようにしている。

 帯グラフの活用は,リッカート法が基本的には順序尺度であることからも好ましい。
 質問の文末表現は,両資料とも「取り組んでいる」「している」が多い。従って,教職員の取り組み努力についての評価と見ることができる。

 平均点と帯グラフのどちらを用いるかは,目的によって異なる。例えば,帯グラフは目で見て分かりやすいので教職員や保護者への資料などに向いているだろう。

 平均点は,大量のデータを統計処理する場合などに向いているだろう。場合によっては両方を併用するのも効果的だろう。しかし,統計処理が必要なければ帯グラフを使う方が分かりやすくてよいと思う。

 [考察]については,どちらの資料も質問をなぞったような内容であり,解決策にも具体性が見られない。これは,質問内容が具体性に欠けるためであろう。しかし,[資料1−2]では,「やや悪い」,「悪い」の少数意見にも目が向くので,改善へ動きが起きやすい。

 平成28年度,平成29年度の評価では教育活動と児童の変容には触れられていない。教育活動は子どもたちの変容を求めて行われるものである。教育活動の成果が求められるとともにそれを明示することが求められる時代であると思う。今後は児童の変容の表記についても工夫が必要となろう。

[資料1-1]
平成28年度 学校評価集計(4段階評価による平均値)
[教育目標・教育計画]
 1まったく思わない,2あまり思わない,3少し思う,4とても思う
1 学校教育目標を意識して指導している。 3.43
2 各学年の教育計画の作成にあたって教職員で話し合っている。 3.54
3 本校の教育活動には地域の子どもや保護者などのニーズに合った特色がある。 3.46
4 教育活動全般にわたって評価を行い,次年度の計画に生かしている。 3.54
5 学校は教育活動全般について,子どもや保護者の願いによく答えている。 3.54

<考察と改善への手立て>
 どの評価も昨年と同様の評価を示しており,概ね達成できている。徳に,「学校評価」については0.1ポイント,5「保護者等の願い」については0.2ポイント上がっている。学校評価の結果を真摯に受け止め次年度に生かす取り組みを今後も進めていくことが大切と考える。また,3「特色ある学校」については,若干数値は下がったが,現在の良さを見据えながら検討していく。

[教科指導]
6 年間の学習指導計画について各学年・各教科でよく話し合い,情報交換を行っている。 3.48
7 各教科の指導内容について基礎・基本を明確にし,教材の精選・工夫を行っている。 3.52
8 少人数学級や少人数指導の導入,各教科の体験学習など,指導方法の工夫改善に努めている。 3.56
9 思考力や表現力を重視した学習指導に努めている。 3.30
10 グループ学習を行うなど,学習形態の工夫・改善を行っている。 3.52
11 学習が遅れがちな児童に対する学習指導を個に応じた視点で行っている。 3.63
12 学習意欲の高い児童に対する学習指導を個に応じた視点で工夫して行っている。 3.33
13 観点別評価など評価の在り方について教職員間で話し合う機会がある。 3.26
14 指導と評価の一体化に努めている。 3.30
15 授業時数の確保に努めている。 3.63

<考察と改善への手立て>
 6「情報交換」,7「基礎基本,教材の精選」,8「指導法の工夫改善」,9「思考力・表現力の重視」,10「学習形態の工夫改善」の5項目については,昨年度よりも0.1ポイント上がった。11「遅れがちな児童への対応」は0.2ポイント上がり,12「意欲の高い児童への対応」は0.3ポイント上がった。
 理由としては昨年度と同様,「ユニバーサルデザインの視点に立った取り組みを深めて」の校内研修により,教材の在り方や指導方法の工夫改善を意識した授業づくりに取り組んだ結果と結び付いたものと考える。また,市指導主事訪問の機会に児童の実態に応じた指導方法の在り方について若手教員が指導していただいた影響もあったものと考える。
 一方で,13と14の「評価」に関わる項目の数値が下がっている。道徳の教科化における評価の在り方も含め,指導目標と評価の一体化について校内研修の柱に位置付ける必要があるだろう。
―以下省略―

[資料1−2]
 平成29年度 学校評価集計 「★」は重点課題として考えるところ 「良い,普通,やや悪い,悪い」を帯グラフで%表示する

[教育目標・教育計画]
1 職員は学校教育目標を意識して指導している。

2 職員は教育計画の作成にあたって改善しようと思っている。

3 学校の教育活動には地域の子どもや保護者などのニーズに合った特色がある。

4 学校は教育活動全般にわたって評価を行い,次年度の計画に生かしている。

5 学校は教育活動全般について,子どもや保護者の願いによく答えている。

[教科指導]
6 職員は年間の学習指導計画について各学年・各教科でよく話し合い,情報交換を行っている。

7 職員は各教科の指導内容について児童に分かりやすくなるよう工夫している。

8 職員は少人数学級や少人数指導の導入,各教科の体験学習など,指導方法の工夫改善に努めている。

9 職員は思考力や表現力を重視した学習指導に努めている。

10 職員はグループ学習やペア学習を行うなど,学習形態の工夫・改善を行っている。

11 職員は学習が遅れがちな児童に対する学習指導を個に応じた視点で行っている。

12 職員は学習意欲の高い児童に対する学習指導を個に応じた視点で行っている。  (例 発展学習への対応など)★

13 職員は観点別評価など評価の在り方について職員で話し合う機会がある。

14 職員は指導と評価の一体化に努めている。

15 職員は授業時数の確保に努めている。★

―以下省略―

帯グラフの例


[考察]

【プラス評価】
 No.36.37.38の結果から,日頃から,校長のリーダ-シップの下で職員が個性を発揮しながら組織的に充実した学校教育活動を行っていることがわかる。特徴としては,No.20.69.76結果から次のことが分かる。

@家庭との連絡を密にした生徒指導ができている。
A教師が,児童が楽しい学校生活が送れるように努め,進んで遊んだり運動したりできる環境作りを進めている。

 これは,日頃の人間関係(情報交換)がよいこと,教育活動についての相互の理解ができているためと考えられる。日頃から「チーム大原小」として,組織での対応の積み重ねが本校の良さとなっていることが分かる。

【マイナス評価】
 12,15,57の結果から次のことが分かる。

@学習意欲の高い児童に対する学習指導が不十分である。
A授業時数の確保や教職員間での指導方法についての検討や校外での研修機会を持つことができていない。

 解決策としては,業務改善,年間行事の精選が挙げられる。年度初めの綿密な打ち合わせが必要になる。
 また,N0.55では,清掃・美化指導への課題が見える。児童任せにしないで児童から離れずに指導する姿勢が大切となる。
 No.40では,各学年間,分掌間の連携への評価が低い。各種校内委員会の活動を見直し,活性化させていく必要がある。

8 評価方法の工夫
(1)評価尺度の種類※(12)
評価尺度には次の4種類がある。

@名義尺度:単なるラベルとして同種のものに割り当てられる数値。性別(男=1,女=2)職業区分(金融=1,不動産=2・・),「はい」(=1)・「いいえ」(=2)など。可能な演算は分類,最頻値。

A順序尺度:ラベルとしての性質に加えて数値の大小や順番に意味があるもの。ただし,差は等間隔ではない。競技の順位(1位,2位,3位・・),段階的な成績評価(優=1,良=2,可=3)など。可能な演算は中央値,四分位数。

B間隔尺度:ラベル,順番に加えて差が均等であるもの。ただし,等比性はない(ゼロがないため)。摂氏(華氏)温度(等差だが0度で温度がなくなるわけではない),偏差値など。可能な演算は平均と標準偏差。

C比率尺度:原点(0があり),順番や差に加えて,比をとることができるもの。重さ(10kgは5kgの2倍),長さ(5メートルは1mの5倍)など。可能な演算はあらゆる計算が可能。

(2)リッカート法による評価の工夫
 評価方法としてリッカート法(リッカート尺度)によるアンケート調査がよく用いられる。一般的には,回答に5つから7つの選択肢(ラベル)を設け,各項目に点数を割り当てて用いる。選択肢が5つのものを5件法、7つのものを7件法という。

[7件法]の例
「1 全くそう思わない,2 そう思わない,3 あまりそう思わない,4 どちらでもない,5 ややそう思う,6 そう思う,7 とてもそう思う」

[5件法]の例
「1 全くそう思わない,2 そう思わない,3 どちらでもない,4 そう思う,5 自非常にそう思う」

[4件法]の例
「1まったく思わない,2あまり思わない,3少し思う,4とても思う」

 リッカート法は順序尺度であるが、複数の回答を束ねて平均をとる方法であれば間隔尺度とみなして統計処理をすることができる。
 [資料2−1]は,児童生徒の行動や道徳性の評価を想定した例である。評価項目には求められる道徳性を便宜的に当ててある。なお,評価項目上の数値は架空の値であり、高得点から低得点へと並べて分かりやすくした。A〜Jは評価者である。
 分析のために得点から、平均値,PSR(平均値÷基準値)※説明参照,SD(標準偏差)を求めたものである。

@ 平均値について
 得点を平らにならしたものであり,全体での評価の傾向を表している。 [資料2−1]の「創意工夫」と「思いやり・協力」はともに平均点3であるが得点の分布に違いがある。これが平均点の落とし穴である。

A PSRについて
 評価結果を平均点で表すと結果が一目で分かりづらい。
 PSRは評価結果を分かりやすくするために独自に工夫した方法である。
5件法の場合、選択肢の中間点3を基準点として,平均値を3で割ったものである。こうすると1が基準となるので、1よりも大きいか小さいかで評価の傾向を素早く知ることができる。
 平均点(Point)÷ 基準点(Standard)つまり(平均値÷3)である。
 評価項目の平均値(Point)を基準値(Standard)で割った値(Ratio)という意味でPSRと表記した。5件法でのPSRの範囲は( 0.33<PSR<1.67 )である。
なお,4件法では,基準値を選択肢1〜4の中央値である2.5にする。

B SD(standard deviation,標準偏差)について
 標準偏差は得点のばらつきの大きさを表す。資料2−1の「創意工夫」のように全くばらつきがないと標準偏差は0となる。しかし,「思いやり・協力」は,平均点が同じく3であるが,得点は2と3と4とばらついており標準偏差は0.77と大きい。平均点が同じでも点数にばらつきがあることが分かる。回答者の経験・知識や役職による受け取り方に違いがあることが考えられる。

 標準偏差は,回答のばらつき具合を知ることにより質問の仕方や質問の内容を改善するために役立つ。

 [資料2−2]は,評価者ができるだけ同じ視点から評価できるようにと配慮した工夫例である。

[資料2−1]
道徳性
評価者10人
平均
PSR
S D
基本的な生活習慣 4 4 5 4 5 4 4 5 4 4
4.30
1.43 0.46
健康・体力の向上 3 3 4 4 4 4 4 4 4 3
3.70
1.23 0.46
自主・自立 4 4 5 4 5 4 4 5 4 4
3.50
1.17 0.50
責任感 3 3 3 3 3 4 4 3 3 3
3.20
1.07 0.40
創意工夫 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3
3.00
1.00 0.00
思いやり・協力 3 2 4 3 2 3 4 2 4 3
3.00
1.00 0.77
生命尊重 自然愛護 3 3 3 3 2 2 3 3 3 3
2.80
0.93 0.40
勤労奉仕 3 3 3 2 3 2 2 3 2 3
2.60
0.87 0.49
公正・公平 3 3 3 2 2 2 2 2 3 3
2.50
0.83 0.50
公共心・公徳心 3 2 2 2 2 2 2 3 2 3
2.30
0.77 0.46

[資料2−2]
基本的な生活習慣 遅刻,欠席、忘れ物,身の回りの整理整頓,時間を守る
健康・体力の向上 運動に親しむ。(外遊び,部活動,地域のスポーツ活動)
自主・自立 計画的に行動する。人を頼らない。
責任感 係の仕事を最後まで頑張る。(学級の係活動等)
創意工夫 生活や学習の向上を目指して工夫する。
思いやり・協力 人の気持ちを大切にする。協力して活動する。
生命尊重 自然愛護 動物、植物、自然を大切にする。
勤労奉仕 清掃・愛好作業に一生懸命に取り組む。
公正・公平 分け隔てなく人と接する。
公共心・公徳心 学校(公共)のものを大切にする。人に迷惑をかけない。


[資料2−3]は,いじめ防止に調査のねらいを絞った例である。
 数値は架空のものであり質問との関連はない。
[教師の取り組み]により教師の取り組み姿勢を評価する。
[児童生徒の様子]によって児童生徒の変容を見る。

[資料2−3](5件法)
[教師の取り組み]
教師の取り組み
平均
PSR
S D
1.いじめ防止の啓発ポスターや標語を作って掲示した。 4.40 1.47 0.49
2.いじめ防止について学級会で話し合わせた。 3.50 1.17 0.50
3.道徳の授業の充実に努めている。 4.00 1.33 0.00
4.児童生徒が学習しやすい学級の雰囲気作に務めた。 3.90 1.30 0.54
5.清掃や愛好作業の目的と意義について指導した。 3.20 1.07 0.40
6.遠足や校外学習では目的について事前に指導した。 3.20 1.07 0.40

[児童生徒の様子]
児童生徒の様子
平均
PSR
S D
1.掲示物や学校の備品を大切に扱っている。 3.80 1.27 0.40
2.弱い者いじめや仲間はずれをしていない。 3.50 1.17 0.50
3.授業中は,誰でも自分の意見を自由に発表できる。 3.00 1.00 0.00
4.授業に落ち着いて取り組んでいる。 3.00 1.00 0.63
5.清掃や愛好作業をきちんと行っている。 2.70 0.90 0.46
6.遠足や校外学習では規則を守って行動する。 3.20 1.07 0.40


(3)学校文化と問題行動
 学校の個性や特色を形作る要素として学校文化,生徒文化,教師文化※(13) といわれるものがある。学校文化は,教師集団と児童生徒集団の相互作用によって生まれ,共通の行動様式や共有すべき行動規範・価値観を有する。教師集団に特有の行動様式や価値観を教師文化といい,生徒集団に特有の行動様式や価値観を生徒文化という。

 小学校に入学した時に右も左もわからなかった1年生が,先生に教えられて学校での生活の決まりや生活の仕方,先生との対応の仕方をなど身につけるようになる。また,上級生に教えられたり,その振る舞いを見たりして上級生への対応の仕方や子どもたち同士の決まり身につけるようになる。そして6年生になると最上級生として下級生をリードして活動をするようになる。下級生は6年生の行動を見習って,やがて最上級生としての行動を身につけるようになる。

 学校文化は児童生徒の行動様式や価値観の形成に大きな影響を与える。それは日常の学校生活に内在するものであるために教師にも児童生徒にも気付かれにくい。学校生活の中で自然に身につくものである。

 学校文化は問題行動の発生に深くかかわるだろう。例えば,いじめを例にとると、児童生徒や教職員が無関心であったり,教職員がいじめに気付かなかったり、気付いていても適切に指導しなかったりということもあるだろう。普段の学校での生活環境や学習環境などの影響が大きいであろう。いじめは気付きにくいものなので定期的に調査をして発見に努めなければならないだろう。

(4) 評価精度向上を目指して
 問題行動の予防には早期発見が大切である。調査を行う場合、有効な回答を得るための工夫を考えてみた。

@調査のねらいを明確にする。
A質問を具体的にする。
B質問事項を一つに絞る。(一質問一事項)
C 経験の差を考慮して平易な言葉を使う。

 評価精度が向上によって教育活動(指導)と問題行動発生(結果)との相関関係を見ることが可能になるだろう。
 例えば,「教師の取り組み」や「児童生徒の様子」において平均点やPSRの上昇とともに問題行動が減ったような場合は,学校の取り組みが有効であると推測できる。逆に,変化がなければ取り組みに効果がないと推測できる。

 教育活動(指導)には問題行動に直接的に働きかけるものもあれば間接的にかかわるものもある。実際には複数のパラメーターがあって相関関係は複雑であろう。従って,複数の調査によって問題行動と各パラメーターとの関係を個別に調べることも必要になるだろう。厳密な判定には検定が必要であるが複雑な処理は避けたい。

(5)P・D・C・Aサイクルの活用
 「いじめ,校内暴力,不登校」は,いつ発生してもおかしくない。これを予防するには,「対策を立てる,実行する,結果を評価する,評価に基づいて改善する」という「P・D・C・Aサイクル」という手法を用いるのが効果的であろう。
 例えば,いじめ防止の啓発ポスターや標語の掲示,学級会による話し合い,全職員での情報の共有・共通理解及び全職員による一致した指導,道徳の授業による取り組みなどを全校体制で実施し、その結果を反省して次の指導に生かすという一連の作業を繰り返し、教育活動が改善し続けられるのである。
 その際に,指導(教育活動)が児童生徒の変容を促したかどうか,つまり指導と結果の相関関係を数的に示すことができれば説得力がある。現在は説明責任が問われる時代である。教育現場にとって大きな力となるだろう。

9 おわりに
 世界はグローバル化が進み宗教的対立,人種差別,難民問題,人権問題,経済的格差拡大,テロリズム等が大きな問題になってきた。世界の国々は,こうした問題への対処に苦慮している。こうした問題が国家を分裂させかねないからである。
 アメリカ,イギリス,オーストラリア,フィリピンでは,道徳教育に力を入れ、これらの問題を解決しようとしている。すぐれた市民の育成により国民一人一人が協力し合い、一つにまとまる国をつくりあげようとしている。
 グローバル化の波はすでに日本にも及び、経済的格差,人権問題,人種差別,ヘイトスピーチ,学校におけるいじめ,自殺,校内暴力などの問題が発生している。
 日本も道徳教育を重視し、道徳を「特別の教科道徳」として教科化し,道徳教育の充実を図っている。
 道徳は学校教育の根幹であるとともに人生を生きる上での大切な指針でもある。教育の成果や結果を適切に評価し改善することは極めて重要である。
 本研究は評価方法として広く用いられているリッカート法に着目し,効果的かつ分かりやすい学校評価を目指して工夫改善を試みた。
 学校が教育活動を自ら評価し改善を続けることは学校のみならず、社会の諸問題の解決にも結び付くと思う。 この研究が学校の役に立てば幸いだ。

2019年8月吉日
  佐藤充千也  


参考・引用文献,参考資料
(1)押谷由夫「道徳教育の理念と実践」放送大学大学院教材2016年PP.129-143.
(2)押谷由夫「道徳教育の理念と実践」放送大学大学院教材2016年PP.96-103.
(3)押谷由夫「道徳教育の理念と実践」放送大学大学院教材2016年PP.103-107.
(4)押谷由夫「道徳教育の理念と実践」放送大学大学院教材2016年PP.109-127.
(5)小学校学習指導要領解説 道徳編 文部省PP.22-26.
(6)小学校学習指導要領解説 道徳編 文部省PP.26-28.
(7)小学校学習指導要領解説 道徳編 文部省PP.56-64.
(8)千葉県勝浦市立荒川小学校「平成14年度 学校要覧」
(9)千葉県いすみ市立大原中学校
平成28年度 第1学年 日光教育キャンプ 職員用しおり
(10)2016年度文科省調査 千葉日報2017年10月27日
(11)千葉県いすみ市立大原小学校「平成28年度学校評価のまとめ」,「平成29年度学校評価のまとめ」
(12)福田 周,卯月研次「心理・教育統計法特論」放送大学大学院教材2009年P24
(13)住田正樹,田中理絵「人間発達論特論」放送大学大学院教材2015年PP68-70

〇押谷由夫「道徳性形成・徳育論」放送大学大学院教材2011年
〇岡崎友典,玉井康之「コミュニティー教育論」放送大学大学院教材2010年
〇三輪建二「生涯教育の理論と実践」放送大学大学院教材2010年
〇石丸昌彦,仙波純一「精神医学特論」放送大学大学院教材2010年
〇鈴木晶子「教育文化論特論」放送大学大学院教材2011年
〇三宅芳雄「教育心理学特論」放送大学大学院教材2012年
〇子安増生「発達心理学特論」放送大学大学院教材2012年
〇荻野美佐子「発達心理学特論」放送大学大学院教材2015年
〇千葉県いすみ市立大原小学校資料
〇平成29年度 学校だより綴り
〇平成28年度 学校要覧
〇平成28年度 道徳教育推進校公開授業
〇平成28年度 学校案内
〇千葉県いすみ市立大原中学校資料
〇平成28年度 心の教育推進キャンペーン 実践授業
〇平成28年度 道徳通信
〇平成28年度 道徳教育推進校公開授業
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